工場のIoT化は、設備の保全活動の効率上げる、作業の見える化などを目的に行います。工場のIoT化には、多くのメリットがある反面、課題もあるため、理解しておくと有用です。この記事では工場のIoT化について、目的やメリット、課題などを解説します。IoT化を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
工場におけるIoT化とは?
工場のIoT化とは、設備にIoT機能を持たせることです。IoT(Internet of Things)とは、あらゆるものをインターネット(ネットワーク)へつなぐ技術です。工場のIoT化は、作業の効率化や見える化といった、さまざまな目的を持って進められます。
総務省の調査によると、現在、国内企業のうち約20%がIoT化を導入しています。割合からも分かるように、導入企業はまだごく一部にとどまっています。
※参考:総務省|令和元年版 情報通信白書|IoT・AIの導入状況と今後の意向
IoT化を実現する4つのフェーズ
IoT化を実現する段階は、4つのフェーズに分けられます。ここでは、フェーズ1〜4に分けて解説します。
フェーズ1
IoT化を実現するフェーズ1として、まずは現場の課題を洗い出します。重要なのは、さまざまな観点から、多角的に課題を抽出することです。できる限りシーンを広げ、さまざまな人の立場から課題を考えましょう。課題を抽出したら、改善後に予想できる効果や導入コストによって、優先順位を策定します。
フェーズ2
課題を洗い出したら、フェーズ2に移ります。課題を解決するまでの仮説を立てましょう。フェーズ2で重要なことは、可能な限り正確にシミュレーションを行うことです。実稼働させる前に効果を分析し、解決手段と予想される効果を把握しておくとよいでしょう。
フェーズ3
シミュレーションが完了したら、フェーズ3に移行します。フェーズ3では、フェーズ2の仮説を実現させるために、どのようなデータが必要なのか洗い出しましょう。闇雲に必要なデータを抽出するのではなく、各データをどのように取得するのかも含めて、検討してください。
フェーズ4
最終段階であるフェーズ4では、IoT機能を使って、フェーズ3に沿ったデータを取得します。過不足なくデータを収集するためには、1つの設備だけでなく、他の設備と統合したデータも必要です。そのため、漏れのないように注意してください。フェーズ1〜4まで、一貫して目的に沿った運用を行いましょう。
工場のIoT化を進める目的・メリットは?
工場において、IoT化を進める目的はいくつかあります。ここでは、目的・メリットについて解説します。
1.自立制御による保全活動を効率化
工場のIoT化によって、保全活動を効率化できます。測定器を用いた、人力での点検が不要になるためです。IoT化することで、生産設備が現在の状態をデータ化してくれるため、改めて計測する必要はありません。
作業を効率化し、人力によって巡回するコストが軽減できる点も、IoT化のメリットです。作業の種類や粒度、タイミングなどを、事細かに計測でき、より正確な分析を行えます。
2.稼働実態を「見える化」する
稼働実態を可視化できることも、IoT化のメリットです。もし1から新しい設備を導入する場合、膨大なコストがかかります。しかし、既存の設備のうち、非稼働を稼働にすることで解決できるかもしれません。
設備を無駄なく活用するために、必要なことが「見える化」です。見える化とは、稼働状況を可視化することで、無駄な稼働が見えてきます。IoT化によってリソースを割かずに、設備の稼働・非稼働をオンタイムで把握できることも魅力です。
3.品質向上
IoT化によって、製造過程におけるあらゆるデータを収集できれば、品質向上につながります。詳細なデータを蓄積できるほど、分析結果も正確になることは、いうまでもありません。IoT機能を持たせることで人の手がなくとも、データ収集ができます。結果として、製造する商品・サービスの品質向上に役立つでしょう。
4.省エネになる
エネルギーの最適化を図れる点も、工場のIoT化を進めるメリットの1つです。設備ごとに、エネルギー管理ができるため、省エネが実現できます。非稼働の場合は、エネルギーを最小限にするといった細かな調整が可能です。必要な設備に必要な分だけ、エネルギーを投入できるため、経済面でも大きなメリットがあります。
工場のIoT化の課題・デメリット
工場のIoT化には、多くのメリットがある反面、課題・デメリットもあります。事前に課題を把握しておくことで、カバーする方法の検討が可能です。「コストをかけて導入したけれど、期待した効果が得られなかった」といった事態を防ぐため、参考にしてください。
セキュリティ強化が必要
工場のIoT化によって、新たな業務が生まれることもあります。IoT化以前は、外部ネットワークと接続しない設備を用いていました。IoT化によって接続が可能になることで、外部から情報の窃盗や漏洩、改ざんなどを目的とした不正アクセスなどのリスクも高まります。そのため、新たにサイバー攻撃への対策を行い、セキュリティの強化に努めることが不可欠です。
古い設備をどうするか
工場のIoT化といっても、ある程度は古い設備も残すことが前提です。全ての設備をIoT機能が搭載された最新機器にするのは、膨大なコストがかかるため、現実的ではありません。古い設備を有効に活用する際、レトロフィットIoTが最適です。古い設備に後付けすることで、IoT機能を搭載する方法です。
工場のIoT化における注意点
工場のIoT化は、いくつかの注意点があります。例えば、システムを継続して管理することや導入コストが発生すること、適切な人材を確保しておくことです。注意点を知っていれば、さまざまな対策が検討できるため、事前に把握しておきましょう。
システムの管理を継続すること
IoTシステムは、導入して終わりではありません。基本的な管理は、ベンダーが担当してくれるものの、ユーザー自身も継続的に運用する必要があります。「導入したが、結局あまり使っていない」といった事態に陥らないよう、導入後の運用方法も事前に考えておきましょう。また、設備を運用できる人材の確保も欠かせません。
導入にはコストが発生する
どのような設備でも、導入には相応のコストが発生します。IoT化が目的になると、費用対効果を十分に得られません。IoT化の目的は何か、達成するメリットと導入コストを比較して検討しましょう。継続して運用するためには、導入だけでなくランニングコストがかかります。導入前の予算には、ランニングコストも含めておきましょう。
適切な人材を確保する
IoT化には、運用に適した人材確保が必要です。近年、急速な市場拡大に伴い、IoTに精通する人材が不足しています。十分な知識がなければ、IoTを効果的に運用するのは容易ではありません。導入後の運用を誰が行うのかも、事前に決めておきましょう。導入しても運用できる人がいないのでは、導入コストが無駄になります。
工場IoT化の導入事例
工場をIoT化した事例は、国内でも多数あります。ここでは導入事例として、3つのケースを厳選して紹介します。
事例1.異常時の即時対応が可能に
1つ目の事例としては、岡谷熱処理工業株式会社の導入例を解説します。同社では、新規の処理炉と既設炉をIoT化しました。スマートフォンを用いて、設備の稼働状況をリアルタイムにモニタリングし、急停止ができるシステムを構築しました。IoT化によって、夜間の稼働管理の負荷を低減でき、異常時の即時対応が可能になりました。
事例2.毎日ノンストップでの稼働が可能に
設備をノンストップで稼働させることに成功したのは、株式会社土屋合成です。同社は、IoTやネットワークカメラを導入しました。これにより、全49台におよぶ「成形機」の稼働データを、自動で取得できる仕組みが構築されました。従業員が少人数であっても、24時間365日稼働できるように体制を実現しています。
事例3.データ活用で事前の予測が可能に
最後に、株式会社木村鋳造所の事例を解説します。同社は早くからIT・IoT活用に取り組んでおり、模型製造分野で3Dデータ作成・活用を行っていました。蓄積した3Dを活用することによって、模型製造の手間を削減し、不良も大幅に減少しました。
加えて、蓄積したデータでシミュレーションを行うことで、製造が難しい形状などについて、事前に把握・予測できるようになりました。これにより、顧客への提案も容易に行えるようになっています。
国外でのIoT事情
2011年、ドイツ政府が「第四次産業革命」を意味する「Industrie4.0」を発表しました。Industrie4.0の中核となったのが「スマートファクトリー」です。スマートファクトリーとは、機器から自動でデータを収集、分析する仕組みです。現在はドイツだけでなく、アメリカや中国でもこのような取り組みを行っています。なお、日本でも2015年から導入しています。
まとめ
工場のIoT化とは、工場内のあらゆる設備をインターネットに繋ぎ、作業の効率化を図るものです。稼働状況が見える化でき、設備を無駄なく使えます。
一方で、IoT化には適切な人材が必要です。自社に適任者がいないという企業におすすめなのが「LiLz Gauge」です。高いAI技術が強みであり、カメラ設置だけで対応できるため、高額な費用や設置時間がかかりません。工場の生産ラインを止めずに導入もできる点も強みです。ご質問やご相談など、お気軽にお問い合わせください。