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IoTカメラとAI活用で本当に点検現場はラクになったか

2020年12月29日

2020年6月にLiLz Gaugeを正式リリースし6ヶ月が経過しました。お陰様で現在1200台以上のカメラが稼働し、日々点検現場を効率化するべくご支援させていただいております。

一方でリリースしてからこの6ヶ月間、コロナ禍のために現場にほとんど伺うことできませんでしたが、お客様・パートナー様と協調し、点検現場で発生する様々な課題に対してLiLz Gaugeを改善し続けてまいりました。IoTカメラとAIを導入して本当に点検がラクになったか、当社自身もその取り組みを振り返りたいと思います。

「AI自動読み取り」という期待に対する現実解

点検効率化のために計器の値を画像解析で自動読み取りする研究は、少なくとも1988年には取り組まれていたようです。

Trivedi, M. M., Marapane, S., & Chen, C. (1988). Automatic inspection of analog and digital meters in a robot vision system.

最近ではComputer Visionだけでなく機械学習を活用した論文も増えており、「AIで計器画像から自動で値を読み取る」という点はお客様の導入動機になっていることが多いことを体感します。この「AI自動読み取り」による期待値は、計器画像の値を自動読み取りし、管理値を超えた場合は人間に通知して欲しいということです。この期待値はとても理解しやすいものですが、この期待に答えるため、LiLz Gaugeでは計器画像の値を自動読み取りし、人間への通知方法を2種類提供することで実運用での現実解を提供しています。

確定値アラート:推定値を人間が点検し、値を確定させた段階でEmail通知

推定値アラート:計測アルゴリズムが画像から推定した計器の値を元にEmail通知

2種類の通知方法がある理由は、画像解析による計器値の推定精度は100%保証ができないためであり、人間が値を確定した時にもアラート通知ができるようになっています。推定値アラートだけの提供は、完全に画像解析の精度に依存した仕組みであり人間がその精度に振り回されることになります。そのため、確定値アラートにて人間が値を確定した段階で通知する仕組みも提供し、目的や精度に合わせて使い分けていただけるようになっています。

閾値アラート機能:2020年10月27日

IoTカメラ設置のデメリットを解消

非接触型のIoTカメラを現場に固定して設置する場合のデメリットとして、「カメラを固定したはずなのに画像がズレる」ということが挙げられます。原因は主に、施設自体の振動によるズレと、カメラの重さによるズレの2点です。このズレは、人間が気づかないレベルで発生していることが多いですが、これにより設定時の画像とズレが出ると前述の読み取り精度にも影響がでます。ドローンやスマートフォンで計器画像を撮影する時に比べるとそのズレは微小なものですが、微細なズレによる読み取り間違いは原因が分かりにくく心理的な負担にもなります。そこで、LiLz Gaugeでは画像ズレ検知機能を提供しています。

画像ズレ検知機能(対応日:2020年10月1日)

その他代表的な改善

実運用を開始してから、主に以下のような改善も実施しました。

  1. 推定値の小数点有効桁数と丸め処理の対応(対応日:2020/9/7)
  2. リトライ撮影機能(対応日:2020/9/17)
  3. 反時計回りの円型計器・矩形型計器の対応(対応日:2020/11/9)
  4. 閾値アラートの規格値上限下限対応(対応日:2020/12/23)

上記以外にもUIの小改善を実施しております。このような改善は、当初から想定されていた内容もありますがお客様とコミュニケーションする中で対応された内容もあります。現場で本当に使えるようになるには、このような改善の積み重ねが重要と考えています。

サービスアーキテクチャの改善

LiLz GaugeはIoT camera + SaaSの組み合わせになりますが、SaaS部分は継続的な改善による価値提供が重要であり、改善しやすい・止めないシステム作りも重要です。リリース当初から一時的にご利用いただけないような障害の早期対応はもちろんですが、サービスアーキテクチャの継続的な改善も実施しています。例えば、2020年6月1日〜2020年12月29日までの期間のLiLz Gaugeへのデプロイ(LiLz Gauge本番環境への反映)数 119回ですが、少なくとも2日に1.1回のペースでサービス改善が実施されていることが分かります。このような継続的で頻度の高いプロセスの実現は、お客様とのコミュニケーションを活性化することにつながると考えています。

当社CTOのクバが2020.6〜2020.12の6ヶ月で取り組んだ主なサービスアーキテクチャ改善内容を以下のようにまとめました。

このような継続的な改善は来年も実施し、さらにサービスの安定化およびお客様への価値提供できる機能開発に集中できる体制を整えてまいります。

参考データ

2020年6月1日〜2020年12月29日までの期間のLiLz Gaugeに関するの主なデータは以下の通りです。

  • LiLz Gaugeへのデプロイ数 119回
  • カメラ画像取得数 623,021枚
  • 計器値の自動読み取り回数 916,587回
  • 月間最大リクエスト数 150万request/月

点検現場はラクになったか

お客様によっては、以下のように点検工数7割減(TMES株式会社提供)という事例も出てきました。結果として点検現場がラクにはなってきたと思いますが、まだまだ改善できることが沢山あります。リリース時期によってはまだ足りない機能があり、ご利用に至らなかったケースもあったかと存じます。現時点で当社に寄せられるご要望は常時100件を超えており今後も継続的に改善してまいります。

最後に

点検現場をラクにするために、一緒に取り組んでいただいたパートナー様、お客様、協力会社様、LiLz研究&開発チーム、その他ご協力いただいた全ての皆様に感謝申し上げます。2021年はさらに現場に貢献できるようLiLzチーム一同全力で取り組んで参ります

本日は偶然私の誕生日ですがこのような日に、皆様に振り返りの報告ができることに感謝しています。皆様良いお年をお迎えください。

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LiLz株式会社 大西 敬吾