インタビューは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA) 施設部 射場施設課 長谷川様と田嶋様にご協力いただきました。
電源・ネットワーク工事不要のIoTカメラを、8台のトライアルからスモールスタート。宇宙開発を支える広大なインフラ施設での導入実績が、保全担当者の作業時間削減というかたちで数字にも表れています。「難しそう」と思っていた現場でも、動き出せた理由をお聞きしました。
普段の業務について教えてください
施設部射場施設課は、JAXAが保有する鹿児島県・種子島宇宙センターや内之浦宇宙空間観測所、東京都・小笠原の事業所における施設・インフラの保全を担っています。中でも種子島宇宙センターは、電力や水を自給自足する特殊な環境にある事業所です。24時間稼働の自家発電設備やダム、浄水場のほか、衛星やロケットを保管する施設の保全業務を行っています。
ロケット打上げを支えるインフラを守ることが私たちの役割であり、その保全の品質が宇宙開発に直結しています。まさに縁の下の力持ちと言える業務です。
LiLz(以下、リルズ)製品の導入以前に感じていた業務上の課題を教えてください
種子島宇宙センターは1966年から少しずつ施設が整備されてきた歴史があり、現在は約200棟の建屋が広大な敷地に点在しています。築年数の古い建物が多く、中には安全設備が十分に確保されていない、はしごに安全帯をつけて昇降しなければならない箇所も残っています。保全担当者にそういった場所に上ってもらうこともあり、労災へのリスクマネジメント強化の必要性を感じていました。
また、JAXAは宇宙・航空開発がメインの事業でありますが、施設保全にも一定の予算を投入しています。ただし、保全対象施設の総量が年々増加しており、優先度を評価してメリハリをつけた予算執行が求められています。その中で、老朽化に伴う漏電・水漏れ・油漏れへの対策を行いながら、保全品質を維持し続けることが大きな課題でした。
さらに施設が広域に分散しているため、夜間に警報が発報した際には現地まで30分以上かけて移動しなければならないケースもありました。移動するたびに安全確認が必要で、荒天時には移動中の被災リスクも伴います。実際に現場に移動した後に状況を確認してみると、
「緊急度が低い事象であり、翌日の日中対応で問題なかった。」というケースもあり、現場の状態を把握せずに動くことが大きな負担になっていました。
リルズを知っていただいたきっかけと、導入の決め手を教えてください
インターネットや展示会、複数の媒体でLiLzの製品を知るきっかけがあり、こちらからお問い合わせしたのがきっかけです。
導入の決め手は、現場に定点で設置するIoTカメラ、LiLzCam(以下、リルズカム)について、製品の機能とサポート体制の両面にあります。まず機能面では、定時撮影とイベント撮影(外部トリガ連動)を組み合わせられること、静止画での提供であること、バッテリー駆動で電源・ネットワーク工事が不要であること。これらを一つの製品でカバーできるサービスは、非常に魅力的でした。
そしてもう一つが、サポート体制です。わからないことがあって電話してもすぐに回答いただけますし、こちらの様々な要望にも柔軟に対応してもらえます。製品の優秀さはもちろんですが、柔軟なサポート体制とご担当者様の対応能力の高さが、リルズを選んだ大きな理由の一つです。
現在、リルズ製品を具体的にどのような用途で活用いただいていますか?
現在はアナログメーター読取りを自動化・リモート化できるAIクラウドソフト、LiLz Gauge(以下、リルズゲージ)を中心に活用しています。主な用途は以下のとおりです。
1 雨漏り監視(漏水センサとの連携)
重要建屋の雨漏りは補修後も経過観察が必要で、毎日の巡視が定常作業に影響していました。漏水センサをIoTカメラであるLC-20シリーズの外部トリガとして接続することで、雨漏りが発生したタイミングでのみ自動撮影・記録が行われるようになり、毎日の巡視を大幅に削減できました。

2 侵入経路不明の雨水調査
雨が降ると特定の建屋の床に水が溜まるという事象があり、カメラで監視を続けたところ、壁面の棚の下から水が侵入していることを遠隔で確認。調査の結果、水切りからの侵入であることが判明しました。水が乾燥してしまう前に映像として記録できたことが、原因特定に繋がりました。
3 排水ポンプの動作確認
カルバート(地中に埋設された水路〔通道〕のようなもの)内への大量流入によりポンプが停止し、冠水が頻発していました。以前は運転状態の監視はできても、実際の状況確認には、現地まで赴く必要がありました。リルズゲージの導入により遠隔で状況が確認できるようになり、ポンプ動作不良の原因の推定も可能になっています。
4 遠方電気室の遠隔監視
夜間の警報発報時、受変電の警報は一括で通知されるため詳細状況が不明でした。セキュリティ上の理由から門扉の鍵の借用も必要で、移動だけで30分以上かかっていました。盤面の故障表示をリルズゲージで遠隔監視することで、「すぐ現地対応が必要か」「翌日対応でよいか」の判断が遠隔でできるようになり、夜間の不要な移動が減少しました。荒天時の移動による被災リスクの低減にもつながっています。
あとこれは将来の話ですが、浄水設備の凝集反応確認にリルズカムを利用できるか検討しています。
地上高9mに位置する高速凝集沈殿池では、薬品反応槽の確認のためにタラップを昇降する必要があり、特に荒天時には大きなリスクを伴っていました。異常を自動検知・通知する仕組みを導入し、毎時間画面を注視することなく、アラート時だけ対応できる運用に改善できる見込みとなっています。これまで属人化していた浄水設備のノウハウのデータ化・技術伝承にも活用の可能性を感じています。
保全業者さんへの展開と、現場からの反響はいかがですか?
リルズゲージの導入当初はJAXA側での活用から始まりましたが、保全を委託している保全業者さんにも展開しました。今では「次はここにリルズゲージを」「このエリアはLiLzGuard(以下、リルズガード)で判定したい」と、担当者から自発的にアイデアが上がり続けています。
導入にあたっては、現場担当者自身が「どこに使いたいか」を提案型として双方向のやり取りで進めたことで、現場への定着がスムーズに進みました。
保全業者さんの作業時間も2024年度から顕著に削減されており、現場のモチベーション向上と業務効率化という両面での効果がデータとして表れています。
今後の展望をお聞かせください
現在はリルズゲージの活用が中心ですが、今後はリルズガードの活用による、自動検知の領域を広げていきたいと考えています。漏水の自動検知や、浄水場の凝集反応の状態把握など、「人の目」でしか確認できなかった箇所への展開を随時検討しています。
またAIによるデータ分析にも期待していて、傾向分析をすることで「どの設備が故障しやすいか」「いつ交換すべきか」という予防保全の判断材料を得られる仕組みを構築していきたいと考えています。リルズカムで取得したデータだけでなく、将来的には、すでに現場に導入されている他の機器のデータも取り込めるという点も魅力で、電力・水という種子島の最重要インフラを守る機器等への展開も視野に入れています。
将来的には、音や動画の取得、さらには自律移動体との連携など、「人に代わるチェック」をIoTソリューションで完結できる未来に向けて、更なる取り組みを進めていければと思っています。僻地での勤務者が減っていく中で、少ない人数でも安全に、高品質な保全を続けられる体制を目指しています。
リルズ製品の導入を検討されている方へコメントをお願いします!

製品の機能が優れているのはもちろんですが、リルズさんの最大の魅力はそのサポート体制と弊社をサポートいただいている方々の対応力の高さだと思います。売って終わりという姿勢が一切なく、こちらの課題に真摯に向き合い、柔軟に対応してくれます。困ったことがあれば、迅速に対応してもらえるため、導入後の運用に大きな安心と自信を与えてくれます。
加えて、同じ課題を持つ保全担当者同士が知見を持ち寄り、情報交換できるネットワークの一員になれることも大きな価値です。リルズさんはそのハブとして機能して様々な機会を提供してくれており、点検・保全に課題を感じているすべての現場担当者の方にぜひお試しいただきたいと思います。
JAXAは、今後も保全業界が様々な知見を取り入れ、発注者側と保全業者側で遠隔地からでも共通意識を持ち、共創関係を確立することで、大きな社会課題を解決する一助となるように日々邁進していきます。輝く未来を創造でき、若い人材にも魅力ある保全業界となるように共に盛り上げていきましょう。
導入企業:国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA) 様
インタビューにご協力いただき、誠にありがとうございました!






